特定許可が必要になる金額が変わります!(その他の金額要件も変更あり)
2022年12月06日令和4年(2022年)11月15日、建設業法施行令の改正が閣議決定されました。
今回の改正では、特定建設業の許可が必要になる金額が変更になるほか、監理技術者の配置・施工体制台帳の作成が必要な金額や主任技術者・監理技術者の専任が必要な金額も変わります。
改正施行令は令和5年1月1日から施行されるため、これらの金額が変わるのも同日からとなります。
どのように変わったのか、以下で見ていきましょう。
概要 |
特定建設業許可・監理技術者の配置・施工体制台帳の作成が必要になる金額の変更 |
これまで特定建設業許可が必要になるのは、元請業者が下請けに出す時の金額の合計が税込4000万円以上・建築一式では6000万円以上になる工事を行うときでした。
これが今回の改正で、特定許可が必要になるのは下請に出す金額が税込4500万円以上・建築一式では7000万円以上のときへと変更になりました。
これに合わせて、監理技術者の配置や民間工事で施工体制台帳の作成が必要になる請負金額も、税込4500万円以上・建築一式では税込7000万円以上へと変更となりました。
今回の改正は平成28年(2016年)以来、6年ぶりの金額要件の変更となります。
主任技術者・監理技術者の現場専任が必要になる金額の変更 |
建設業許可業者は、一般・特定、元請・下請に関わらず、監理技術者または主任技術者を配置する必要があります。
この主任・監理技術者は、『「公共性のある施設もしくは工作物」または「多数の者が利用する施設もしくは工作物」に関する重要な建設工事』では、一定の金額を超えた場合、現場に専任する(他の現場と兼務しない)必要があります。
この現場専任が必要になる金額は、これまで3500万円以上・建築一式工事では7000万円以上でしたが、今回の改正で4000万円以上・建築一式では8000万円以上に引き上げられました。
※「公共性のある施設もしくは工作物」、「多数の者が利用する施設もしくは工作物」については、公共工事だけでなく民間工事も該当するため、個人住宅以外のほとんどの工事が該当することになります。
特定専門工事の金額の変更 |
特定専門工事とは、請負金額や元請・上位下請が一定の技術者を配置する等の要件を満たした場合に、主任技術者の配置が不要になる工事のことです。
公開時点では「鉄筋工事」「型枠工事」がこれに該当します。
この要件の中で、請負金額の要件が先述の主任・監理技術者の現場専任義務を踏まえて3500万円までとされていましたが、今回の専任義務の金額変更に合わせて4000万円までとなりました。
金額要件が引き上げられた理由 |
前回金額要件が引き上げられたのは平成28年ですが、その前の引き上げは平成6年(1994年)でした。
前々回から前回では約22年空いていたのに、前回から今回では3分の1以下の約6年という期間で引き上げが行われました。
なぜこのような短期間で、金額要件の引き上げが行われることになったのでしょうか。
消費税率の引き上げと工事費上昇 |
国土交通省の報道発表では変更の理由も提示されているのですが、「建設業を取り巻く社会経済情勢の変化に鑑み、特定建設業の許可を必要とする一件の建設工事についての下請代金の額等を引き上げる(中略)必要があるからである。」とされており、詳細な理由はいまいち判然としません。
ただ、同省が公開している別の資料を参照してみると、理由が分かってきます。
国土交通省では建設業に関して「適正な施工確保のための技術者制度検討会」という会議が設けられており、ここで金額要件の検討が行われていたようですが、そこで提示された資料で金額要件が引き上げられた理由が説明されています。
短期間で引き上げに至った大きな理由は、消費税率の引き上げ、そして工事費の上昇の2つです。
この6年の間に8%だった消費税が8%→10%に引き上げられており、また前回改正があった平成28年から令和2年までで工事費が約8%上昇しています。
この2つが上昇しているのに金額要件をそのまま据え置いておくと、以前と同規模の工事で同じだけ下請に出すとしても、上昇率の分だけ金額が上がってしまうため、特定許可や監理技術者の配置等が必要になってしまう可能性があります。そこで、これら2つの上昇率を金額要件に反映させる目的で、今回の改正に至ったのだと思われます。
(例) 平成28年時点で税込3800万円を下請に出す場合には特定許可・監理技術者の配置等は不要ですが、同じ規模を下請に出す場合を令和2年時点での消費税率・工事費の上昇率を掛け合わせて考えると以下のようになります。 3800×1.08×(1.10/1.08)=4180 要件変更前だと上限の4000万円を超えてしまうため、特定許可・監理技術者の配置等が必要となります。 一方で、要件変更後は上限の4500万円を超えていないため、特定許可・監理技術者の配置等は引き続き不要となります。 |
まとめ |
ここまで今後の金額要件の変更点を見てきました。
今回の改正に関係してくるのは特定許可業者さんが多いかと思われますが、主任技術者の専任要件や特定専門工事など、一般許可業者さんにも関係してくる点があります。
各種要件をしっかり確認して、工事を施工するのに必要な体制を整えましょう。