事業承継する時に建設業許可は引き継げるのか?
2021年02月17日建設業の事業承継を考えている場合、注意すべき点は何でしょうか。
承継の手順や個人事業主の場合などを見ていきます。
改正建設業法の施行により建設業許可の承継が可能に |
建設業の事業承継において、承継後も切れ目なく事業を継続させるためには、建設業許可の承継に注意する必要があります。
事業承継には、社内における承継(親族に会社を引き継ぐ親族承継、役員や社員に会社を引き継ぐ従業員承継)と、社外の第三者に承継する第三者承継(M&A)があります。社内における承継では、株主や役員に変更があるだけで、建設業許可の要件さえ満たされていれば、建設業許可は問題なく承継することができます。一方、第三者承継の場合、事業譲渡・会社合併・会社分割(事業譲渡等)が発生するケースでは特に注意が必要です。
実はこれまで、建設業者が事業譲渡等を行った場合、譲渡、合併、分割後の会社は新たに建設業許可を取り直すことが必要で、新たに許可が下りるまでの間、建設業許可の空白期間が生じ、建設業を営むことが出来ないという期間が生じてしまっていました。しかし、令和2年10月1日に施行される改正建設業法により、これまでできなかった建設業許可の承継が可能とない、譲渡、合併、分割後の会社は、設立後すぐに許可のある状態での営業ができるようになります。
事業譲渡等の際に、事前に許可行政庁に認可を受けることで、空白期間なく建設業許可を承継することが可能となります。個人事業主の相続による承継についても同様の規定が整備されています。
▼事業承継
1.親族内承継 親族内承継とは、経営者が配偶者や子どもなどの親族に事業承継することです。 2.親族外承継 親族承継とは、親族以外の人物に株式を買い取ってもらう事業承継です。例えば、経営能力のあり役員や従業員に後継者になってもらうケースです。 3.M&A M&Aとは、会社・事業をほかの企業に買い取ってもらう方法で、社外の第三者に承継する第三者承継です。 4.株式上場 自社株式を証券市場に上場し不特定多数の投資家に購入してもらう方法です。 |
承継の手順 |
例として、A社の地位をB社が承継する場合、次のような手順で建設業許可の承継を行うこととなります。
<A社、B社の許可> A社:土木(特) B社:建築(特)、内(般) <手順> ①B社が許可行政に対し、事前に事業譲渡等について申請 ➁許可行政において、申請の内容について審査 ➂許可行政庁からB社に対し、認可(または不認可)について通知 ※もともとの許可に付されていた条件の変更や新な条件の付与が可能 ➃事業譲渡等の日に建設業の許可についても承継 B社がA社の許可(土木(特))についても営業可能 |
事業承継の対象外となるケース |
改正建設業法の承継規定により、事業譲渡等あらゆるケースにおいて建設業許可が承継できるようになったわけではありません。対象外となるケースがありますので注意が必要です。
具体的には、一般建設業の許可を受けている建設業者が、同一業種の特定建設業の許可を受けている者の地位を受け継ぐようなケースや、特定建設業の許可を受けている建設業者が、同一業種の一般建設業の許可を受けている者の地位を受け継ぐようなケースは、この制度の対象外となります。なお、これらのケースに該当する場合であっても、前者であれば、承継先が当該同一業種について事前に廃業することで承継可能ですし、後者であれば、承継元が当該同一業種について事前に廃業することで承継可能となります。
<ポイント> ➀異業種間の承継は可能 ➁同一業種でも、一般・特定の区分が同じなら承継は可能 ➂承継元となる建設業者の許可の一部のみを承継することは不可能 |
許可の有効期間について |
事前認可を受け事業譲渡等を行った場合、承継する許可と、もともと持っている許可の両方の有効期間が更新されることとなります。つまり、承継後の全ての許可の有効期間は、事業譲渡等の日から5年間となります。
個人事業主の相続について |
個人事業主の相続による事業承継の場合も認可を受けることにより、被相続人の受けていた建設業者許可を承継することが可能です。例として、被相続人である個人事業主Xの地位を相続人にである個人事業主Yが承継する場合、次のような手順で建設業許可の承継を行うこととなります。
<手順> ➀個人事業主Xの死亡後30日以内に、相続人である個人事業主Yが、許可行政庁に対して相続の認可を申請 ※建設業許可を承継しない場合は廃業届を提出 ➁許可行政庁において、申請の内容について審査 ③許可行政庁から個人事業主Yに対し、認可(または不認可)について通知 ※もともとの許可に付されていた条件の変更や条件の付与が可能 |
認可の申請をした場合、認可・不認可の通知があるまでは、相続人は建設業許可を受けたものとして取り扱われるため、空白期間なく建設業許可を承継することができます。